愛犬チーコ
今回の似顔絵は有名人の似顔絵ではありません。
番外編としてウチの愛犬チーコの似顔絵を載せたいと思います。
俺の実家におります愛犬であり愛娘であるチーコは、
マルチーズとシーズーのハーフでして、
両方のいい所を上手いコトとりまして何とも可愛らしい犬です。
1994年の7月生まれで、2010年の今年16歳になる筈でした。
その我が家の愛犬チーコが2010年3月25日9時45分
15年9ヶ月と言う、犬からしたら大往生、人間で言うと80歳くらいの
犬生を全うし、天に召されました。
ガキの頃と言えば、
のび太やオバケのQ太郎並みに犬に追いかけられた事もある、
犬が大嫌いな俺の家に、
1万5千円と言う超安値と言う理由で母に買われ、
まだ産まれて1,2ヶ月で、
両手のひらで収まってしまうくらい小さい頃やってきたチーコ。
犬嫌いの俺だったが、
まだ子供で小さくて、走ってはコケ走ってはコケするチーコはとても可愛いと思えた。
チーコの可愛らしさは日に日に増し、
数ヶ月もしたら大切な家族の一員になった。
トイレもすぐ覚えたし、
「おすわり」や「待て」なんかは教えても無いのに何故か出来た。
しかし自分の意思もちゃんとあって、
気分が乗らない時は呼んでも振り向くだけで来なかったりするヤツで。
「飼い主に絶対服従」みたいな関係は嫌だったので、そんな感じがとても良かった。
粗相もしないし、悪戯とかもたまにはするけど、一回言えば解ってくれる、そんなヤツで。
少しビビリな所もあったけど、そんな所も含めて、
俺ら家族にとってはとても理想的でお利口なイイ犬だった。
そんなチーコだったんだが、ただ一つ問題があった。
家族以外の人間に馴れないのだ。
来客があろうものなら吠える。
「ダレじゃボケ!帰れ!」
と言わんばかり。
友達が来ても吠える。
何度来ても吠える。
「またお前か!帰れ!」
と言わんばかり。
家族の誰かが抱いていれば吠えはしなくなるのだが、
まあその件だけは困ったモンだった。
どんなに犬好きな人が来てもチーコはなつかなかった。
客人が帰れば、いつものお利口で可愛い犬に戻った。
俺の友達はチーコの事を「顔は可愛いけどバカ犬」と言った。
実際、奴等の気持ちはよく解る。
だけど、俺も小さい頃そんな感じだった。
「本当に愛している人にしか心は開かない。」
そんなチーコの姿は、
汚れた常識に少なからず心を侵蝕されて、
大人になってしまった俺にとって、
汚れを知らない幼き頃の俺を見てる様で、
チーコの気持ちは何となく理解できてた。
一回だけ8歳くらいの頃、子宮摘出と言う大きな手術をしたくらいで、
他はとりわけて病気は無かったチーコに異変が出たのは、今年の2月頭。
ご飯を食べなくなった。
最初はただの食欲不振かと思ったけど、
好きなものすら食べなくなり、
水しか飲まなくなった。
そして1日数回吐いた。
黄色い胃液のようなものや白い泡。
時折何か痛みをこらえる様に震えていた。
それから、かかりつけの動物病院に何度か通い、
点滴や何度か血液検査をしてもらったんだが、
特に大きな異常は見られなかった。
吐くのが辛そうなので訊ねると、
吐いてしまう原因は胃に食べ物が入ってないからだと言う。
でも、無理に食べさせた所で、結局吐くのだ…。
こないだまで元気だったとは言え、
チーコはもう15歳、人間で言うと80歳くらいの婆様だ。
老犬である事は間違いない。
色々自分なりに調べたら、
老衰…犬の最期に見られる症状だった。
チーコが食を断って10日が過ぎた頃、
チーコの死が近づいている症状を受け入れられない俺と、
どうしてもどうしようもない現実に悩む母とで、
大喧嘩をした。
親子とは言えど考え方は違う所もあり、
愛するチーコが死ぬなんて考えられない現実が相まって、
衝突した。
ただ、お互いたどり着く所はただ一つ。
「元の元気なチーコに戻って欲しい。」
喧嘩が落ち着いた時、ソレをずっと聞いてたチーコが、
自分から食べる時がやってくるかもしれないと、
食べなくなってからも一応毎食出していたフードを、
食を断ってから初めて自分で食べた。
「食べたくないけど頑張って食べるから。喧嘩しないで。」
そう言ってるかの様だった。
それからも症状は悪化をたどる一方で、
吐いてはぶっ倒れ、失神する事もあった。
また病院に連れて行こう。
そう考えた時、思った。
チーコはビビリな所があって、昔から病院が嫌いだ。
病院に行く事を察すると、家を出てから診察が終わるまでずっと震えた。
診察を終えるとさっき震えてたのが嘘みたいに震えなくなる。
異変が出てから、
点滴した所でそんなに症状は変わらないように思えた。
「それってただ、自分等のエゴで、延命してるだけなんじゃないか…?」
「チーコは病院行くだけで嫌なのに。」
病院に行って、チーコに嫌な思いさせて…。
もう最期も近いかもしれないのに、
それで1,2カ月命を延ばしたところで何の意味があるんだ。
もし、
痛い、辛いの様な症状が出てしまった時は
ソレを取り除く為に行くのは仕方ないにしても。
「もうチーコが嫌だと思う事は全部やめよう。」
「老衰して最期を迎えるまで、なるべくストレスの掛からない生活を送らせてやろう。」
家族で相談してそう決めた。
それから病院に行くのはやめた。
貰ってた薬も飲むのが辛そうだった。
だからもう飲ませるのをやめた。
何にしても吐くのがとても辛そうだった。
だから、どうしたら吐かなくなるか考えた。
胃に何も入ってないから吐くのなら入れてやればいい。
しかし飯はもう食べないし、無理に食べさせても、結局吐く。
流動食のようなものがあればと、
手当たり次第ペットショップに電話したり、
インターネットで調べてみると、
まさに望んでいるような、
「食べなくなった老犬に」みたいな流動食を見つけた。
ソレを買ってきて、プラスチックの注射器で飲ませた。
まあまあ嫌がらずに飲んでくれる。
それをやると少し元気になったように思えた。
それから最期の時を迎える約1ヶ月間、
赤子に乳を飲ますようにその流動食を注射器であげるのだが、
ワラをも掴む気持ちでさがした、
その流動食をあげ始めたその日から、
家族の想いが通じるかの様に、
チーコは吐かなくなった。
それからは家族で協力して、
なるべくチーコを独りにしない様に心がけた。
皆、仕事を持っているが、休みをずらしたり、早く帰宅したりした。
それから、家族全員でそうする事でチーコの最期の日まで、
チーコが家で独りで過ごす時間はほぼ無かった。
最期の日まで日に日に衰え、その姿を見るのはとても辛かったけど、
色んな事を覚悟して決めたあの日から、
チーコの辛い事やストレスは最低限に抑えられてる気がした。
最期の日の4日前、
それまで排便の粗相などほぼ皆無に等しかったチーコが、
トイレに間に合わず、オムツを余儀なくされた。
最期の日の3日前、
ほぼ歩けなくなった。
最期の日の2日前、
歩けないのに、出かける俺へふらふらで見送りに来てくれた。
最後の日の前日は、
とうとう寝たきりになっちゃったんで、
床ずれに気をつけないとな、なんて母と話していた。
最期の夜、
いつも母親の足元で寝るチーコは、
夜中母親を起こして吠えた。
最期の力を振り絞って、
力ない声で吠えた。
1時間吠えた。
最期の朝、
チーコか衰弱し始めてから、
家族で時間をずらして家にいたので、全員揃うことはなかったんだが、
その日は珍しく家族全員久しぶりに揃ってた朝だった。
朝、眼が覚めると、チーコは息はしているものの、
もう動かなくなっていた。
身体に力は無く、首も支えられてない状態。
そんなチーコを
母が抱き
俺が抱いて
父が抱いた。
最期に弟に抱かれて少しすると、
動かなくなった体が軽い痙攣を起こした。
そして、閉じていた口が開いた。
「もう最期だ…。」
そう皆で悟って、
最期はチーコの一番だった母親に抱かれてと思い、
母親に…。
痙攣はするものの、
口は開いているものの、
激しく辛そうには見えなかった。
最期はとても穏やかに、
家族全員に看取られて、
15年と9ヶ月の命に幕を閉じた。
最後の最後まで
本当に本当に
お利口なお利口な
死に方だった。
―チーコへ
お前が死んでしまって今日で5日。
まだ全然、気を抜くと滝の様に涙が出るよ。
俺が泣いてしまうのは、
自分が寂しいからじゃないんだ。
「本当に愛している人にしか心は開かない。」
お前なのに、
天国なんかに行ってしまったら、
まだ家族の誰もそっちにはいないのに、
独りで寂しいだろうなと思って。
もうどうする事も出来ないから、
天国でお前が心を開くことが出来る愛するモノが、
1秒でも早くできる事を心から願うよ。
お前と家族に成れた事で、
俺の犬嫌いは少し治ったと思う。
お前と出会う前は、
犬と心が通い合うなんて馬鹿げた話だと思ってたし、
犬が人間の言葉を理解するなんて、ありえないと思っていた。
だけど、
お前とは心が通ったし、
俺の言葉も100%理解してたよな。
こんな犬嫌いの俺に、
お前は、それを教えてくれた。
本当に有難う。
でもやっぱりデカイ犬は怖いし、
小さいヤツでも、お前以外の犬は何考えてるか解らんから、
やっぱり怖いな。
なんで、
お前が死んでしまったのを機に、
俺は元の犬嫌いに戻ろうと思う。
もともと犬嫌いの分際で、
お前に人間と犬が心が通い合う事を教えてもらい、
とても素晴らしい経験をさせてもらえたんだ。
それでもう十分だろ?
そして、今回この世で、お前は俺ら家族にしか心開かなかっただろ?
俺が本来の犬嫌いに戻れば、
俺の生涯で愛した犬はお前だけって事になるだろ?
コレでおあいこだ。
もうお前はこの世にいなくなったから、
これからは心でお前の事を想うよ。
チーコ。
有難う。
大好きだ。
俺の人生で
「愛犬」は
お前だけだ。
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